東京の多摩地区から埼玉県西部にかけて広がる武蔵野台地は水が乏しく、米があまり取れませんでした。そのため、この地域は麦類が重要な作物でした。
米が少なく、麦が主流。必然的にこの地域の人達はうどんを食べる機会が多くなり、うどん打ちの技術が磨かれる様になり、やがてそれは一つの郷土料理、
武蔵野うどんと呼ばれる物になりました。
「うちたて家」で初めて肉汁うどんを食して以来、武蔵野うどんの本場である多摩地域で武蔵野うどんを食べるのは一つの夢でした。会社の夏期休暇の最終日、機会を得たので行って来ました。
今回の訪問店
「むぎきり」は、都内でも有数の武蔵野うどん処である小平市に店を構えています。
西武多摩湖線の一橋学園駅南口を出て西、一橋大学小平分校の方へしばらく向かうと、やがて民家などに紛れてうどん屋がぽつんと見えて来ました。
外観はいかにも街のうどん屋といった感じですが、店内には麺切り台がどーん。お土産もどーん。まるで
この店そのものが一種の観光地の様です。玄関脇にはDancyuなど自身の掲載された雑誌が置いてあります。
客は12時前の時点でワタシ一人。奥からは若い兄ちゃんの笑い声が聞こえて来ます。なんでも亡き先代の跡を若いご主人が継いだとの事ですがこの人っぽいですな。見てみると本当に若い…。下手するとワタシより若いんじゃないでしょうか。
にしんもりうどんが名物らしいので、それを注文しました。
うどんの上には大きなにしんの半身がどーんと。更に野菜の千切りと獅子唐の天ぷらが乗っています。もりと書いてありましたがダシを入れる器は無く、どうやらぶっかけの様にダシをうどんに直接かけて食べる様です。
早速ダシをかけて啜ると、
ぬおおぉぉこのうどん美味い。うどんは少し平打ちっぽい捻れたもので、やや紫ががった茶色をしています。噛むとシコシコしていて、記憶に無い美味しい香りがうどん自身から溢れます。「うちたて家」で食べたうどんの香りともまた違うんですね。静岡県藤岡産の地粉を使っているそうです。
にしんは甘辛く味付けしてあって、確かに名物と呼んでも差し支えない美味しさ。野菜もシャキシャキ。食感はうどんと合わない気がするのですが、それぞれの味そのものは抜群でした。
店を出る頃には席も随分埋まっていました。
本場での初めての武蔵野うどんとの遭遇は、期待以上の印象をワタシに抱かせてくれました。何だかこれから先に待ち受ける武蔵野うどんとの遭遇が、ますます楽しみになって来ましたですよ。