それは長く長く続いた梅雨が、ようやく終わりを迎えようとしていた7月の終わりの事です。会社のワタシの上司である豆蔵氏が、打ち合わせ先の水天宮前で美味いうどん屋を見つけた!と、帰って来るなり叫んだのでした。教えて下さったその店の名前は
「蛎殻(かきがら)亭」。
ワタシ自身全くこの周辺には行きませんし、今までに聞いた事の無い店名です。しかしこの豆蔵氏、上司としては
極めてチャランポランですが、チャレンジブルさと食べ物に関する嗅覚はワタシなんぞより遥かに上で、今まで何度もお世話になっています。まぁ少なくとも大ハズシする事は無いでしょう。そう思い、お店を尋ねてみる事にしたのでした。
今回は前回の「さか田」からの連戦です。「さか田」から大手町駅まで歩き、営団半蔵門線に乗って二駅。水天宮前駅で降り、新大橋通りを茅場町に向かって歩き、途中のみずほ銀行のある角を曲がると、ありました…「蛎殻亭」です。
綺麗な店内はカウンターのみ9席。厨房ではお婆ちゃんが一人で作業をしていました。食券制なので券売機まで行きメニューを調べます…。うーん?券売機には釜揚げうどんとあるのに店のメニューには湯だめうどんとあったり、良くわからないメニューがありますが基本的には普通のうどん屋のメニューの様です。今回はちょっと珍しいものが食べたくなったので、券売機にお薦めと書かれていた味噌胡麻うどんを注文します。食券をお婆ちゃんに渡して…。
ってお婆ちゃん、
今、うどんを釜に入れませんでしたか? うはー、茹で立てが食えるのかここ。店内が立ち食いみたいな雰囲気だったので予想だにしていませんでした。お婆ちゃん釜の中のうどんを眺めながら、ゆっくりゆっくり仕事をしています。うーん良いなぁ。お婆ちゃんが作り出す店内の雰囲気がたまらなく良くて、思わずぼへーっとしてしまいます。
15分ほど待ってうどんが出て来ました。結構量が多いです。うどんは少し太平で捻れています。待ち侘びましたとズズッと啜ると、
ぬおっ。グミ系のすごいコシがぎゅんぎゅん歯に絡み付きます。水切りしきって無いのかまだうどんにぬめりが残っているのですが、これがまた気持ち良い感触となって口内を踊ります。美味いじゃないですかあぁ。
甘めの味噌ダレに関しては食べ慣れて無いせいもあって、余り深い印象は無かったのですが、うどんはかなりすごかったです。うあー失敗した。普通のうどんを注文した方が楽しめたなーこりゃ。
失礼ながら完全にノーマークのうどん屋でした。うどんもさる事ながら、東京駅にほど近いこの場所でこの雰囲気。そしてこのお婆ちゃん。
香川県にはお婆ちゃんが店主を務め、その雰囲気が香川の風土と合わせて心地良い空間を作り上げ、それそのものが店の特徴となるうどん屋が何件かあるのですが、この店はそれと同じ、間違いなく
東京の婆ちゃん系の匂いのするうどん屋でした。
うーんご馳走様です。東京もまだ捨てたものじゃないですね。