前回「
豊前房」にお邪魔した後、荏原中延にお邪魔していたのですが、その内夕食の時間となったので、この近辺でうどんをいただく事にしました。
そこでふと思いついたのが、ホームページを見て下さった方から情報をいただいた「元祖カレー南蛮」のお店。そういえば、中目黒にあったはず…という事で、荏原中延から中目黒へ逆戻り。お邪魔してみる事にしました。店名は
「朝松庵」です。
お店は、中目黒駅から商店街沿いに8分程歩いた所にあります。外観は本当に普通の町のお蕎麦屋さんといった感じ。しかし店頭には有名人のサイン色紙、そしてこのお店が初めて提供した、カレー南蛮の由来が書かれています
なんでも、時代は明治41年。このお店の二代目が急速に流行り始めた洋食をメニューに取り入れてみては如何だろうか、と試行錯誤して、カレーを種物としてうどんに乗せて大阪のお店で出したのが、カレー南蛮の始まりなのだそうです。
その後、東京のお店でも明治43年に提供する様になり、紆余曲折を経て名前が受け入れられるに至ったのだとか。現在は四代目だそうです。
ちなみに余談になりますが、カレーうどん(と、カツ丼)を開発したのは早稲田の「三朝庵」(明治37年)。それに対して、カレー南蛮蕎麦(と、カレー丼)を初めて提供したのがこちら、朝松庵と言われているみたいです。
資料が少ないため真意は完全には確かめられないのですが、両店ともこれだけ有名なメニューの元祖を主張出来る程に、歴史のあるお店だという事はわかります。
店内は流石、年季が入っていまして、カウンターとテーブルで30席ほど。18時入店で先客は3人。 メニューはかけそば480円を始めとして、きつねやたぬき、鴨南蛮などスタンダードなものが揃っています。蕎麦はもちろん、中華そばや冷やし中華もあり、丼物、一品料理も揃っています。本当に町の蕎麦屋さんといった感じです。
今回はもちろんカレー南蛮を注文。するとカウンターの向こうで、店員のおばちゃんがゴリゴリと手元で音をさせ始めました。
カウンター越しなので見えないのですが、こちらのカレー南蛮はいつでも同じものが作れる様、スパイスがあらかじめ作成してあり、それに蕎麦ダシを混ぜて作るのですとか。この音はおそらく、スパイスを溶いているものではないのかなーと思います。良い匂いがして来ましたよ。
そして10分程して、お待ちどうさまの声と共にうどんが出て来ました。すりきり一杯にカレーダシが溢れています。啜ってみると、熱々濃厚な蕎麦ダシの下に隠れたスパイシーなお味。もったりとしていて、あぁぁ、まさしく昔懐かしいカレーダシといった趣です。
うどんは角が取れていてもっちりしたもの。柔らかいのですが粘力はあって、ぶちぶち切れる事はありません。おそらく、このもったりとしたカレーに負けない様にうどんを作って来たのでしょうね。そこにお店のプライドみたいなものが感じられて、何だか嬉しくなったのでした。
昔から全くやり方を変えずに、頑固に誇りを持って営業して来た蕎麦、うどん屋さんといった雰囲気で、うどんをいただいていて、とても好ましい印象がありました。
出来れば、これからもずっとこのままに、この味を守っていただければ良いなぁ…と思います。